「IT断食」のすすめ
2011年の年明けに、まだ断片的であったアイディアをA3用紙10枚程度の手描きメモにまとめ、共著者である遠藤功教授のもとを訪れたのがはじまりでした…(代表取締役社長 山本孝昭)
ドリーム・アーツが目指すこと
多くの企業で、受ける側が処理しきれないほど膨大な情報が飛び交う「情報の洪水」がおこっています。それぞれがじっくり考え、現場に触れ、そして直接対話をするための「良質なアナログ時間」を通じて生まれる「業務への付加価値」が、今、情報の洪水によって奪われているのです。
今こそ、「IT断食」によって、ITとの関わり方を見直す時期です。ドリーム・アーツが目指すのは、「情報を治水」し、ITに拘束されている時間を減らすこと。「良質なアナログ時間」を、日本企業の競争力の源である「協働(ともに働く)・協創(ともに創造する)」に振り向けることです。
企業・グループの中で氾濫する情報の整理、鍛えられてきた知恵やノウハウの共有・活用、さらには組織やロケーションの壁を超え、企業グループの「一体感」の醸成を促すこと。
そして、組織・グループが遂行する全ての業務を通じて、より大きな付加価値を生み出し、よりしなやかな組織を育てる「仕組み」を提供することをドリーム・アーツは目指しています。
EIP型グループウェア:インスイート®のパンフレットより抜粋
書籍内容紹介
はじめに:すべてのテクノロジーは、人間に牙を剥く
ITは劇的にわれわれの生活や企業活動を革新してくれた。ITがなくなれば、今の安全で清潔で快適な生活は維持できなくなる。しかし、他のテクノロジーが過去にたどってきたように、ITも重大な転換期を迎えている。…猛烈な勢いで日々進化するITは、すでに我々に牙を剥き始めている。IT断食をすることで、心して手なずけ、使いこなすことを強く意識しなければならないステージに来ているのだ。全文を読む
代表取締役社長
山本孝昭
おわりに:「ニンベンのIT」を実現しよう
IT中毒の加害者は、けっしてITではない。それを正しく使いこなせない人間にこそ非がある。暴飲暴食がメタボやアル中を引き起こすように、ITの過剰摂取はIT中毒を必ず招く。私たちに今必要なのは、ITをまっとうに使いこなす良識と知恵である。全文を読む
株式会社ローランドベルガ― 会長
遠藤功氏
目次紹介
- 職場にはびこるIT中毒
- ICF(情報洪水)とBLT(バカのロングテール)
- 電子メールは責任回避の道具
- 「コピペ」ばかりで「自分の考え」がない
- 厚化粧されるプレゼン資料
- 膨大なデータ分析が生み出す、当たり前過ぎる結論
- ITは「プロの魂」「職人技」をすり減らす
- 6割の中間層がローパフォーマーに転落
- みんなが加害者で、みんなが被害者
- 「摂取過剰」であることを自覚しよう
- コミュニティに逃げ込む「草食世代」
- 頭でっかちの「氷河期世代」
- もっとも危機的な中間管理職
- 丸投げ、放置、無責任の経営幹部層
- 「ヒト」の本能に根ざすIT中毒
- 跋扈した「アメリカ出羽守」
- 「パソコン1人1台」キャンペーンの嘘
- モンスターユーザーの誕生と肥大化するIT予算
- BLTを「宝の山」と吹聴するIT業界のマッチポンプ
- 情報の肥大化、行動の弱体化
- IT断食の心構え
- IT断食の流れ
- 経営トップから明確なメッセージを打ち出す
- 「見える化」し、理想的な「ベスト・ミックス」を探す
- ITを「断つ」時間を強制的に設ける
- 新しいワークスタイルをルール化する
- 職場の「IT断食」リーダーシップ
- 「ユーザー主導のIT」への転換
- ケース1 土台のDNAがIT中毒を防ぐ
- 震災で発揮されたヤマトの「現場力」
- ケース2 「わいがや」で現場を活性化
- 「所感」に注目し、「次の欲しい」を探るダイキン工業
メディア掲載情報
- ダイヤモンド・オンライン インタビュー記事掲載 「顧客に会わない営業」はなぜ生まれたのか?IT企業があえて挑む“PC強制撤去”の効果 (2014年9/19)
- 日本経済新聞 夕刊P.7 ドリーム・アーツ社長山本孝昭さん —キーワード登録で「IT断食」、重要な記事だけアクセス(電子版私の利用術)(2014年7/24)
- フジテレビ「ニュースJAPAN(2014年4/29放送)」出演
- 日経ビジネス(2014年2/14号)「昭和な会社が強い」に掲載
- BSニュース「日経プラス10」(2014年2/14放送)」出演
- 東洋経済オンライン(2012年12/19,20)「ITのプロが警告する、日本企業の新たな病」にインタビュ・ー記事掲載
- テレビ東京系列「ワールド・ビジネス・サテライト(2012年12/7放送)」出演
- TOKYO FM「TIME LINE(2012年11/29放送)」出演
- 九州朝日放送KBCラジオ「武内裕之That’s On Time」(2012年11/26放送)出演
- 日経MJ(16面)ブームの予感「脱ネット依存 私の時間に集中」に掲載(2012年11/5)
- 週刊ダイヤモンド(2012年10/6号)特集「アップルの正体」にインタビュー記事掲載
- 日経ビジネスアソシエ(2012年7/10号)にインタビュー記事掲載
- マイナビニュース(2012年4/24)にインタビュー記事掲載
- NHK総合テレビ『首都圏ネットワーク』(2012年4/9放送)出演
- 日経コンピュータ(2012年3/29号)編集長インタビューに掲載(遠藤功氏)
- 日経パソコン(2012年3/26号)勝谷誠彦氏の連載コラム「ハードディスクカフェ」に掲載
- TOKYO FM「クロノス(2012年3/22放送)」出演
- 日本経済新聞朝刊(1面)に掲載[2012年3/1]
- J-WAVE「JAM The WORLD(2012年2/27~3/1)」出演
- NHKラジオ第1「NHKジャーナル(2012年2/23放送)」出演
- AERA(2012年2/27号)パワポ、メール特集に掲載
- 週刊ダイヤモンド 新春合併特大号に掲載
- 日経情報ストラテジー 2012年2月号に掲載
- 朝日新聞朝刊(2012年2/8) 15面に掲載
(2011年12/5~18)
(2011年11/28~12/4)
(2011年11/17~23)
(2011年11/7~13)
「IT断食」のすすめ
2000年頃から問題意識を感じていましたが、強い危機感を持ち始めたのは、2010年の年末頃でした。IT技術の劇的な向上によって確かに便利にはなったけれど、深刻な問題も出てきているのではないか、あと数年もすれば、さらに恐ろしいことになるのではないかと。
ドリーム・アーツでは、役員が集まって1日中あれやこれやとディスカッションをする”ロングランミーティング”を実施しているのですが、そこでこんな話が出てきました。
―今はまだほとんどのデバイスは画面を通じているけれど、いずれ画面ではなくなるのではないか。擬似的なパーソナリティと人間のような柔らかい皮膚を持ち、声のような合成音を発する、コンピューターが内蔵された高性能な人形・アンドロイドが出てきたとき、人間とITとの境が、わからなくなってしまうのではないか。あと10年もしたら、秋葉原あたりではアンドロイドをつれてデートしているかもしれない!?
おそらく、このままいくと”考える”、”判断する”といった知的活動や精神的な活動までITに依存してしまうのではないでしょうか。もしかしたら、”人や社会とつながっていたい”という本能的な欲求までが、コンピューター相手に置き換えられてしまうかもしれません。決して大げさな話ではなく、実際にITは深く人間の生活に浸透し、すでに過度な依存状態=「中毒」に陥ってしまっています。
例えば、弊社は企業の情報共有/コミュニケーション分野に関するソリューションを提供していますが、この分野でもすでに深刻な問題が発生しています。本書のなかで詳しく触れていますが、情報が洪水状態となり多大な弊害が出ているのです。
ITが悪者なわけではなく、利用する側の問題です。ITは劇的にわれわれの生活や企業活動を革新してくれました。しかし、テクノロジーには必ずメリットとデメリットがあります。利用する側の油断と慢心により、テクノロジーは人間に牙を剥くのです。(※詳細は「はじめに」に記載)日々進化するITは、すでに我々に牙を剥き始めています。IT中毒がその現象の一つです。ITを心して手なずけ、使いこなすことを強く意識しなければならないステージに来ているのです。
ITへの妄信があったのではないでしょうか。これもかなり以前から気になっていましたが、一部のマーケティングメッセージで見かけるような「全部ITのなかでできる」というのはウソだと思っていました。電子メールであろうと、グループウェアであろうと、ブログであろうと、このなかだけで全部コミュニケーションや情報共有が成立するということはない。
やっぱり、現場に行って、本人と話して、触ってみて、匂いをかいで。そういうアナログがあって、初めて本質的なコミュニケーションや情報・知識の共有が進むのではないでしょうか。ITだけで全てが解決するわけではないのです。むしろ今後は、直接会う、対話をする、といったアナログの時間を増やすべきなのです。
2000年頃から問題意識を感じていましたが、強い危機感を持ち始めたのは、2010年の年末頃でした。IT技術の劇的な向上によって確かに便利にはなったけれど、深刻な問題も出てきているのではないか、あと数年もすれば、さらに恐ろしいことになるのではないかと。
ドリーム・アーツでは、役員が集まって1日中あれやこれやとディスカッションをする”ロングランミーティング”を実施しているのですが、そこでこんな話が出てきました。
―今はまだほとんどのデバイスは画面を通じているけれど、いずれ画面ではなくなるのではないか。擬似的なパーソナリティと人間のような柔らかい皮膚を持ち、声のような合成音を発する、コンピューターが内蔵された高性能な人形・アンドロイドが出てきたとき、人間とITとの境が、わからなくなってしまうのではないか。あと10年もしたら、秋葉原あたりではアンドロイドをつれてデートしているかもしれない!?
冒頭でお話したように、このままの状況が続けば非常に危険だという考えに至り、これをテーマにした本を書こうと思いつきました。さらに、別の見地からの意見も聞きたいと思ったとき、遠藤教授の顔が浮かびました。以前から親しくさせていただいており、この本のテーマとなる「現場力」「アナログ」を主題としたディスカッションも何度か重ねていました。
きっとこの課題に共感いただけると確信し、これまでの想いを書き留めたメモを手に、遠藤教授を訪ねたのがはじまりです。そこで遠藤教授に共感いただき、有意義なディスカッションを重ねたことで構想がまとまりました。
さらに、その構想を書籍の形に昇華してくださった日本経済新聞社 副編集長の赤木氏との出会いや、本のテーマに共感いただき取材に応じてくださった多くの方々のご協力があり、出版にこぎつけることができました。本当に感謝しています。
ITとの付き合い方が、大変革期を迎えています。それは、この本のタイトルに興味を持たれた皆さんも、薄々感じはじめていたことではないでしょうか。IT中毒の反動で、本能的にアナログを求めているのかもしれません。
本書をきっかけに、IT断食を実行され、活力のある現場を取り戻されることを願っています。