【対談】三浦雄一郎氏×山本孝昭:アコンカグア登頂プロジェクトを終えて

──
ドリーム・アーツがメインスポンサーをつとめた「アコンカグア登頂プロジェクト」から5ヵ月。ドリーム・アーツ広島本社に三浦雄一郎氏をお迎えし、なぜ冒険するのか、なぜ挑戦し続けるのか、その情熱の原点から今回のプロジェクトまで、あらためてお話を伺いました。三浦氏の尽きることのない情熱の原点から「アコンカグア登頂プロジェクト」まで、スタートから盛りあがった対談となりました。ぜひご覧ください。

山本
今回の「アコンカグア登頂プロジェクト」も含めて、三浦先生の「挑戦」に対する世の中の共感が高まっているように感じます。これは、不透明な時代に対して、理屈ではない人間の根底にある情熱や夢、挑戦、想いの大切さに皆さんが気づきはじめたからだと思っています。
長年、冒険家として活躍されていますが、若い頃と現在をくらべてご自身でなにか変わったと感じるようなことはありますか。
三浦氏
そうですね、若い頃は競争社会のなかで常にトップでいようと世界を意識していました。「これができたら死んでもいい」という気持ちでした。そして気がついたら60歳を超えており、残りの人生でなにができるのかを考えたときに「登山」が頭に浮かんだのです。いまは年齢そのものが挑戦です。
山本
86歳での挑戦「アコンカグア登頂プロジェクト」は断念という結果となりましたが、非常に大きな反響があったと思います。単なる成功だけがすべてではないところが、きっと時代にマッチしているような気がしています。
三浦氏
そうかもしれませんね。まさに現代は人生100年時代といわれる高齢化社会です。しかし、高齢者に対していえば、自動車事故に代表されるようなマイナスイメージが多すぎますよね。僕のような高齢者でも世界の名だたる山に挑戦している、まだまだできることを周りにアピールしていきたいと思います。
山本
エベレストに3回登ってもなお挑戦したいという、その三浦先生のやる気はどこから湧き上がってくるのでしょう。
三浦氏
僕はエベレストに3回登りましたが、このまま終わってはつまらないと思いました。「もう1度行ってみたい」と。人生はひとつの大きな旅ですから、旅の続きでエベレストへ登り、次の目標であるキリマンジャロ登頂もその工程のひとつだと考えています。
三浦雄一郎氏 誰もやっていないことに挑戦してみたいと三浦氏
山本
三浦先生の原点はお父様である敬三氏の影響が大きいと以前に伺いました。敬三氏も登山家であり、3回の骨折を乗り越えてモンブラン大滑降を達成されましたよね。
三浦氏
昔は父にジェラシーを抱いていました。60歳を過ぎても父は遥か先にいて、自分の人生とくらべて父の生き様がうらやましいと思っていたのです。
僕は生活習慣病になって、老年人生これでおしまいだと感じたときに、父が99歳でモンブランに登っている。そこで「僕はなにをしているんだ?」と。それから色々なことに挑戦してみようと思いました。
山本
敬三氏の存在は大冒険の原点とも言えるわけですね。令和の時代にも三浦家のチャレンジは続いていくと思います。 まさに三浦先生の著書『歩き続ける力』のタイトルに表現されているとおり、淡々と、それでいて自然体でいらっしゃる三浦先生の姿に周りは気持ちを揺さぶられて、自分も頑張ろうと力をもらっているように感じます。事実、私もお話を伺っていて、同じ気持ちになっています。
三浦氏
父は明治37年生まれで、親子3代にわたって歴史をつくってきました。
応援してくださっているみなさんに、少しでもそのように勇気をもっていただけているのなら嬉しいです。
山本孝昭 最後の最後に登頂を断念したのは英断であり、周りに大きな示唆をもたらしたと語る山本
山本
昭和、平成と続いて…令和の時代にも三浦家のチャレンジは続くわけですね。今回の「アコンカグア登頂プロジェクト」は最後の最後で断念することになったわけですが、断念したことではなくて、三浦先生による挑戦そのもののストーリーがニュースに取りあげられ、世間が注目しました。結果ではなく、挑戦そのものが着目されるなど、周囲からも、違った視点がでてきたのだと思います。
三浦氏
そうかもしれません。やはり失敗を恐れない、まずは挑戦してみようということが大事です。人生失敗はあるし、僕は非常に生ぬるい決断をしたかもしれません……
山本
いやいやいや…!やらない決断をしたとき、86歳で涙がでるほど悔しがる姿には奮い立つものがありました。もしかしたらアコンカグアに登頂するよりも結果的に深い意味のあるメッセージをみなさんが受け取ったようにも感じます。
年齢を重ねられていくなか、これからの三浦先生のチャレンジには、より本質的な意義があるような気がしています。
三浦氏
ありがとうございます。
僕自身は登頂をあきらめたことが残念で悔しい気持ちが強いけれども、同時に次のチャンスをつかもうという気持ちもありました。次がなければ無理して登っていたと思います。
また、最近では中高年の山岳事故が多いんです。登山では無理をしてしまいがちですが、僕が頂上を目の前にしてドクターストップで引き返してしたことは、ひとつの評価を受けました。たいして役に立たないけど、世のため人のため…少しでも役に立っていれば嬉しいです。
山本
決断も含めて示唆に富む冒険であり、挑戦だったと思います。
本日はありがとうございました。
三浦氏・山本
ありがとうございました。
三浦雄一郎氏と山本孝昭 失敗を恐れない、まずは挑戦することが大事! とすべての人にエールを送る三浦氏と山本

>>「三浦雄一郎氏 アコンカグア登頂プロジェクト」特設ページ<<

>>第3回 知話輪サロン/ひろしま『挑戦し続ける三浦雄一郎の肉体と心』<<