~80歳でエベレスト登頂に成功し、86歳の今も挑戦し続けるヒミツ~
『挑戦し続ける三浦雄一郎の肉体と心』
- 日時
- 2019年6月7日(水)
- 会場
- ドリーム・アーツ広島本社 おりづるタワー
2019年6月7日、特別ゲストとして冒険家・プロスキーヤー 三浦雄一郎氏、パネリストとして広島県知事 湯﨑英彦氏をお招きして「知話輪サロン/ひろしま」を開催しました。
本サロンは、日本・世界レベルで活躍するゲストの話に耳を傾け、ざっくばらんに語り合い、ドリーム・アーツにご縁がある方同士で交流し合うインフォーマルな集いです。“ユルいけれど真剣”、“和気あいあいだけれども本音”、“理屈よりも感性”……そんな雰囲気のなか盛況のうちに終了した「知話輪サロン」を今回は特別にレポートします。
- INDEX
『挑戦し続ける三浦雄一郎の肉体と心』
~80歳でエベレスト登頂に成功し、86歳の今も挑戦し続けるヒミツ~
- 冒険家・プロスキーヤー
- 今年1月、南米最高峰アコンカグア(6,961m)の登頂に挑戦された三浦 雄一郎氏。惜しくもドクターストップにより登頂アタックは断念されましたが、80歳で3度目のエベレスト登頂を果たし、86歳になった今もなお、現役のプロスキーヤー、登山家、冒険家として挑戦を続けていらっしゃいます。
前半は、三浦氏のこれまでの軌跡や人生、そして何よりも挑戦し続ける心・気持ちについてお話を伺いしました。
三浦氏とドリーム・アーツは、約7年前にご縁をいただき、先のアコンカグア遠征ではメインスポンサーの1社としてご支援させていただきました。
人生100年時代と言われる21世紀、そして令和の時代。通常の講演会では得られない、知話輪サロンならではの感動やひらめきを沢山得られる講演となりました。
三浦氏:
みなさん、こんばんは。 本日は多くの方にお集まりいただきありがとうございます。 先ほど、県庁にお伺いしたのですが、知事室でスキーの話をさせていただくという貴重な機会をいただきました。本日は知事にもご出席いただき、ありがとうございます。
ドリーム・アーツの山本さんには「
アコンカグア登頂プロジェクト」のメインスポンサーに真っ先に手をあげて引き受けていただき、ありがとうございます。
ただ今回は、不本意ながら6,000mまで登った頂上目前のところでドクターストップがありまして、しぶしぶ山から下りて帰ってきました。普段、山に登ると相当くたくたになって帰るのですが、今回はやや運動不足気味です(笑)
思い返すと子どものころからスキーで滑っては転んで、あまり他の人がしないようなことをしていたら、いつの間にか年をとっていました。
60歳を超えたころに引退しようと考えていましたが、ちょうどそのころ、美味しい焼肉やジンギスカン、そしてビールを食べ飲みする生活をしていたために、あっという間にメタボになりました。
病院で嫌々検査を受けると余命3年もないと言われまして、190の高血圧、不整脈、糖尿病、腎臓病…まさに中高年の生活習慣病でした。
そのころ親父(三浦敬三氏)は、スキーやトレーニングで3回も骨折しているのに、99歳でのモンブラン登頂を目標にしていました。とうとう親父は99歳でついにモンブランへ行きました。そのとき、僕も一緒に行きました。
こんな親父の姿をみて僕も負けるものかと、親父がモンブランならエベレストへ登ってみようと思ったのが再出発のきっかけです。それから今日まで挑戦を続けています。
普段から健康を意識していますが、健康法には守りと攻めの2種類あると思っています。朝1日1時間歩いたり、ラジオ体操をしたりするのが守りの健康法。僕は攻めの健康法で、足に重りをつけてのトレーニングを開始しました。片足10kgずつのおもり、背中に30kgの荷物を背負って歩くこともあります。気づいたら膝の半月板損傷の痛みが取れ、1ミリもなかった半月板が、4ミリに増えていたときは70歳を過ぎでも回復できるのだと医者に驚かれました。
体力をつけ直して70歳でエベレスト登頂に成功しましたが、この時はたまたま運が良かっただけなのだと考えています。
それで自分の力をもう一度試してみたいと不整脈の手術を2度受けて75歳でもエベレストを登ることをその時に決めたんです。次は80歳という具合に続きます。
山本: 再出発から10年経たないうちにエベレスト登頂をし、そこから挑戦を続けられているんですね。エベレスト登頂後の挑戦は順調だったのでしょうか?
三浦氏:
いえいえ。76歳の時にスキーのジャンプに失敗して、腰から落ちて大腿骨骨折、恥骨まで割れて…病院へ救急車まで運ばれました。リハビリを頑張れば車いすで生活できるとは言われたのですが、なんとか登山できる状態まで戻したいという一心で、治しました。
出発寸前に心臓の不整脈を再び指摘され、また手術。もう今年の挑戦は無理だろうと周りは思っていたそうですが、どうしてもやらなきゃいけない、できるんだと僕は思っていました。
後日談ですが、その後大きな地震があった影響で、延期していたら、3年間はエベレストに登れないところでした。
湯﨑氏:
挑戦する強い心が、そのような巡り合わせすらも呼び込んでいるように感じます。
三浦氏:
80歳でエベレスト登頂したあと、次に目指したのが南米最高峰で標高約7,000mのアコンカグア。先ほども触れましたように、これは不本意ながらドクターストップでした。
最近は中高年の山の遭難が多いそうですね。無理をして事故になることが多い。僕自身が頂上を目の前にして引き返したことが帰国後に評価されました。たいして役に立たないけれど、世のため人のため…少しは役に立ったと思っています。ただ次の90歳での挑戦がある、と思ったからこそ断念できました。
いま、エベレスト山頂はすごい渋滞だそうで、90歳になったらエベレストではなくキリマンジャロに登ろうかと思っています。山本さんもキリマンジャロ考えているようです。よかったらご一緒しましょう!(笑)
本日は、みなさんにお会いできて良かったです。ありがとうございました。
- 特別ゲスト
冒険家・プロスキーヤー
- パネリスト
広島県知事
- モデレーター
ドリーム・アーツ
代表取締役社長
- 三浦雄一郎氏の多くの学びの中に笑いもあるトークセッションのあとは、引き続き特別ゲストの冒険家・プロスキーヤー 三浦 雄一郎氏、パネリストに広島県知事 湯﨑 英彦氏をお迎えしてパネルディスカッションと続きました。
モデレーターはドリーム・アーツ 代表取締役社長 山本 孝昭が務めました。こちらも特別にダイジェスト版でお送りします。
山本: 三浦さん、貴重なお話ありがとうございました。 後半はパネルディスカッションです。午前中は大雨警報や避難勧告もあり心配しましたが、被害もなく湯崎知事にも無事に参加いただきました。湯﨑知事、ありがとうございます!
湯﨑氏:
本当に何ごともなく良かったです。本日はよろしくお願いします。
さて、みなさんは崖のうえからスキーで滑走するなど、危ないので真似はしないようにしましょう(笑)雪崩に巻き込まれたりして、いまここに生きているのが不思議な感じもあるのではないでしょうか。
三浦氏:
確かに。好奇心が強いもので、北極にも行きました。エベレストでは時速300kmを超えたスピードで転げ落ちたのですが岩に落ちて助かりました。
その時は助かるわけないけれど、一方では助かったらこれほど贅沢な人生はないと思いながら気を失いました。
気が付いたら、幸運なことに雪崩の一番うえにいて、ぽっと月が浮かんで見えました。それ以外にも本当に運が良かったと思うことは度々ありましたよ。
湯﨑氏:
真似しようと思っても真似できないですね。これまで色々な環境で厳しいスキーをされてきましたが、挑戦とは離れた気持ちのいいファンスキーも滑られていますよね?
三浦氏:
やっぱり夜しんしんと雪が降ったあとに晴れた日のパウダースノー。いつだってファーストラン(初滑り)は最高です。雪は雲からできていますし、自然と一体になったように感じます。具体的には、故郷である北海道の手稲山も最高の北斜面です。
湯﨑氏:
夢のような話ですね。私も長年スキーをしていますが、広島市内だと新雪が積もってもせいぜい15cm程度なので、なかなかパウダースノーを滑れるシチュエーションには出会えません。
三浦さんは過酷なこともたくさんしておられますが、もっとも過酷だった経験は?
三浦氏:
やはりエベレストですね。標高8,000mからパラシュートを使っておりてきましたが、今考えても生きて帰ってこれたのは運が良かったと思っています。 その様子を撮影していた動画を、のちに英語版に加工したのですが、なんと海外ドキュメンタリー部門でオスカー、アカデミー賞を受賞しました。 当時のアメリカ大統領であるジミー・カーターさんは、ストレスが溜まって病気がちだったそうですが、この動画を見てスッキリした、勇気をもらったと話されていました。4年間で20回位ご覧になられたそうです。
山本:
三浦さんの挑戦がアメリカ大統領を勇気づけた。凄い話ですね。実際にお会いしたこともあるとか?
三浦氏:
アメリカの財界人はスキーをされる方がたくさんいます。
スキーリゾートで滑っていると、急遽、カーター大統領が会いたいとのことでお会いしました。800名ほどいる政治集会場の壇上で大統領が先ほどのオスカーを受賞した映画の話をしてくれました。
湯﨑氏:
人間の極限、必死の力というのは何か心打つものだったり、メッセージを持つことだったりということなんでしょうね。ありがとうございます。
山本:
今回、アコンカグアは断念という結果になりましたが、予想に反して、ものすごく取り上げられましたよね。 むしろ断念されたというコンテクストのなかに新しい挑戦の意味があったように思うんですよね。
三浦氏:
今回は僕にとっては99%登頂できると思っていたので不本意だったのですが、勇気ある撤退という形での冒険になりました。 チャレンジすることが大事ですが、時に諦めることも勇気がいると、ある意味では非常に良い形で取り上げていただきました。
山本:
86歳の方が悔し涙を流される状況はある意味奮い立つようなものがありますよね。
湯﨑氏:
チャレンジをしようと思い定めて実現するまでの道のりというのは、1人でできるわけでもないですよね。その道のりをどのように切り開いていったのでしょうか。どのように人を巻き込んでこられたのでしょうか。
三浦氏:
自分でこれをやってみたいという夢、たとえば頂上に旗を上げたいと公言するんです。若いころからやっていることは、前例のないことが多かったので、バカじゃないかと言われました。だからやってみようと思いました。
湯﨑氏:
通常はできない理由を並べて、諦めてしまうことが多いと思うのですが、それを乗り越えるのは、なかなか誰でもできないような気がします。
三浦氏:
だから公言するんです。自分で掲げた目標を周りに公言すると応援してくれる人ができて、その力が大きくなります。おっしゃる通り、1人だけではできません。そして、最後まで諦めないで準備し、まずはスタートすることも大事です。
湯﨑氏:
まず動き始めることが大事な気がしますね。
三浦氏:
そうですね、まず計画をたてたら行動する、地図をつくる。息子が親孝行してくれていますし、最強スタッフが支えてくれる力が大きいです。
湯﨑氏:
一見無謀そうなことをされているわけですが、その裏には周到な計画もあったのでしょうか。
三浦氏:
そうですね。今回80歳でエベレストに登る前に、直前の不整脈手術をしなくてはならない、時間もない状況でした。その時にふと”年寄り半日仕事”という言葉を思い出したんです。
1日の仕事を半分にしようと思いました。朝行ってお昼はごはんをゆっくり食べる、昼寝する、散歩する、18日程度その生活を繰り返したら心臓のリハビリも終わり、足腰も復活しました。その場に応じて自分に一番あった方法を見つけ出すことを習慣づけています。
山本:
初めて三浦さんにお会いしたのが7年前、エベレストに登られる直前でした。
7月の晴天でしたが、三浦さんは2kgの重りを両足につけたままでゴルフ、18ホールまわっていらっしゃいました。日々努力をされていると驚き、今また印象深く思い出しました。
湯﨑氏:
冒険家でありプロスキーヤーである三浦氏。ビジネスの起業家としての三浦氏は、どのように周りを巻き込んでいくのでしょうか。
三浦氏:
僕の場合はスタッフが応援してくれたのが大きく、その面でも運が良かったのだと思います。学生時代から企画書を書いて仲間とスポンサー集めをしていました。アメリカ、マサチューセッツの海洋研究所に勤めていた学生時代の仲間は、スキー部時代の資金調達経験が一番役に立ったと言っていました。
おかげで運の良さ、巡りあわせが重なって、サントリーの佐治さん、石原裕次郎さんなどにも協賛いただける形になりました。50年以上前ですから当時の2億円は10倍の価値があります。ただスポンサーがたくさんいるなかで、挑戦しなかったら…ひょっとしたら史上最強の詐欺師なのではと思ったこともありますよ(笑)
湯﨑氏:
すごい!実現したい夢が大きければ大きいほど周りは共鳴してくれるのでしょうか。
山本:
何か理屈ではないところで惹きつけられるもの、響くものが三浦さんにはあるのだと思いますね。
本日はありがとうございました!
三浦氏:
ありがとうございました!
- パネルディスカッションが終わったあとも、当日は参加者から多くの質問が寄せられました。
参加者からの「夢をかなえた(登頂の)瞬間はどんなことを感じるのか」という問いに対して、 「まずどうやって生きて帰るかを考えました。エベレストでの遭難者のうち、8割は下山中に遭難しているそうです。下り道こそ危険であり、気をつけなくてはと思いました」と三浦氏。
また、「スキーで滑るときに恐怖心はありますか」と質問があがった際、「スタート時点は無我夢中。死んでもいいと思えるような世界に入る」とのこと。そのため、唯一、途中で迷ったのは今回の「アコンカグア登頂プロジェクト」だそうです。 「普通人間は経験を積み重ねると恐怖が増すといわれますが…その年齢にあったことをしています」とのコメントに、会場が笑いに包まれた場面もありました。
知話輪サロンを終えて
- 当日は、おりづるタワーを運営する、株式会社広島マツダ 代表取締役会長兼CEO松田哲也氏にも来社いただき、タワーの展望台を案内してくださいました。 中国新聞社の取材を終えて、翌朝はRCCラジオ生放送に出演された三浦氏。お忙しいなかご来社いただきました。RCCラジオでも、かつて総理大臣だった田中角栄氏に参院選出馬を打診されて断ったお話や、学校へ行きたい息子をスキーに連れて行った話など、多岐にわたるお話を伺うことができました。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。 なお、知話輪サロンで集まった会費は、ドリーム・アーツが支援している財団法人日本盲導犬協会などの 社会貢献団体に全額寄付しております。知話輪サロンは、ドリーム・アーツがスポンサードするチャリティー・イベントとして今後も活動してまいります。