開発note|スマートデバイス活用 アイディアを膨らませる4つの視点
こんにちは。ドリーム・アーツの伊勢川と申します。これまでお堅い株・信用取引のアプリ、人気の家計簿アプリ、マニアックな英文速読アプリなどを開発してきました。2012年にドリーム・アーツに入社。入社以来、企業におけるスマートデバイス(スマートフォン・タブレット)活用の企画・開発を担当しています。今回は、スマートデバイス導入の目的を検討する際に参考となる、アイディア出しの視点を取り上げました。ものは試しに、貴社の業務にあてはめて考えていただければ幸いです。
何よりもまず大事なのは、
「スマートデバイスを活用して何が実現したいのか」ということ
スマートデバイス導入やスマートデバイス向けのシステム投資の際に考慮すべき点は多々あります。OSの種類、セキュリティをどうするか、どのようにデバイスやコンテンツを管理するのかなど。これらは重要なトピックではありますし、一定規模以上の組織でスマホ・タブレットを導入するには、避けて通れない問題です。しかし、何よりもまず考慮すべきは、目的を明確にすることであり、それらのトピックは、目的が決まった上で考えればよいことです。目的が明確になっていなければ、どんな高級・高機能なシステムを導入しても「持っているだけ」のスマートデバイスになりかねません。以下では、その目的を考える際のヒントを詳しく紹介いたします!
アイディアを膨らませる4つの視点
最初の段階では、アイディアは質より量が重要です。最初から、質の高いアイディアを出そうとすると、現状のしがらみにとらわれた面白くないアイディアしか出てこないことが多いため、遠回りのようでも、まずは沢山のアイディアを出すことをおすすめします。そこで、アイディアを膨らませるための4つの視点を整理しました。
アイディアの膨らませ方
- 改善 : 既にあるものを改善する【課題発見】
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- 業務遂行の視点での、不満・不安・不思議(三不)を挙げてみる
- 消費者(お客さま)視点の、不満・不安・不思議を挙げてみる
- 理想 : 理想像から、そこに至る道のりを考える【課題発見】
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- やりたいことを挙げる、あるべき姿を描く
- 特定の業務でタブレットを活用しているシーンを描く
- 転用 : 既存の成功モデルを、別の方法で実施する【施策検討】
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- 他社の事例エッセンスを自社に転用した場合を考える⇒後述の事例紹介
- BtoCの成功事例のエッセンスを業務システムに転用した場合を考える
⇒Facebook(SNS)、Line(エモーショナルサイン)
- 組合せ : 既存のものを組み合わせる【施策検討】
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- 経営課題・業務課題と業務シーンと既存技術を組み合わせてみる
- 不満・不安・不思議(三不)と既存技術を組み合わせてみる
課題発見に役立つ視点-『①改善』と『②理想』
場や経営者にひびく、いいアイディアを出すためには、まずテーマ選びが重要です。そこで、よりよいテーマ決め(課題発見)のためのアプローチを紹介します。課題発見のためのアプローチは、大きくわけて、現状の理解からスタートするボトムアップと、あるべき姿からスタートするトップダウンのアプローチに分類できます。ボトムアップアプローチだけを採用すると、部分最適解しか発見できない可能性がある一方、トップダウンアプローチだけを採用すると、現実からかけ離れた解になってしまう危険性があります。よって、バランスのよい課題発見のためには、両方のアプローチを併用するのが無難です。ここで紹介する「①改善」は、ボトムアップアプローチ、「②理想」は、トップダウンアプローチに該当します。
改善 : 既にあるものを改善する【課題発見】
まずは、業務遂行の視点、お客様の視点の双方から、現状の不満・不安・不思議(三不)を挙げてみましょう。
その際、現場を巻き込んで一緒に考えるのがポイントです。アイディアのヒントをもらいながら、ついでに根回しもできて一石二鳥だからです。挙った「三不」を整理して問題分析をする際は、「因果ループ図」という表記法が役立ちます。
定性的問題分析の際の表記法では、QC7つ道具の1つである特性要因図(魚骨図)が有名ですが、魚骨図は因果関係が一方向のみで、根本原因が1つだけという問題構造しか表現できないという弱点(特徴)があります。しかし、現実の問題構造は要因同士が相互に影響しあい、根本要因も一つではないことの方が多いのではないでしょうか。
まずは、業務遂行の視点、お客様の視点の双方から、現状の不満・不安・不思議(三不)を挙げてみましょう。
そのような相互に影響した因果関係を表現できるのが、因果ループ図です。要因同士の関係を矢印で結び、原因の増減が結果の増減にどう影響するかを表す記号を書くだけのシンプルな図です。因果関係がループしており、悪循環を起こしている部分を断ち切る、悪い状態で均衡を保っている部分の均衡を崩すといった観点で注力ポイントをみつけます。「因果」という名前がついていますが、厳密な因果関係にこだわる必要はなくただの相関関係を矢印で結んでも構いません。細かい表記ルールにはとらわれず、問題構造をシンプルに表記し、皆で認識を共有することだけを考え、ある程度割り切って使っていただくのがよいと思います。(参考:ITmediaエンタープライズ 情報システム用語辞典:「因果ループ図」)
理想 : 理想像から、そこに至る道のりを考える
まずは、自社の業務の将来像やあるべき姿を描きます。その際、ビジョンを持った経営者や、夢見がちな若者にヒアリングをすると、いいヒントが得られるかもしれません。理想像が現状からあまりにかけ離れていると口に出すのが憚られるかもしれません。そのような場合は、飲み屋でのどを潤しながら議論をするのも一つの手段です。現状や誰がいつやるかを考え始めると、考えが萎縮してしまうため、それらは一旦棚上げして、夢を描くのがポイントです。理想像と現状のギャップを分析し、現状からその理想像に至るまでの道のりを、キーワードレベルで時系列に並べていきます。
施策検討に役立つ視点-『③転用』と『④組合せ』
世の中でおこっているイノベーションをよく観察すると、多くの場合、既存技術の「転用」や「組合せ」から成り立っていることに気付くと思います。
改善 : 既にあるものを改善する【課題発見】
ご参考までに、ドリーム・アーツがお客様に提案・導入した事例を紹介します。他社のスマートデバイス活用の事例のエッセンスを、自社の業務に当てはめた場合を考えてみてください。
ご提案・導入事例ご紹介
タイトル | テーマ | 利用シーン | キーワード |
連絡ノート 大手メディアレンタル・物販会社様 |
タブレット活用により、接客時間を増やす 店舗運営業務の負荷を軽減し、個々の生産性を向上させる |
店長・店舗スタッフが、朝礼での連絡事項・売上状況の共有などに利用 | 引き継ぎ・写真・SNS・チェックリスト・基幹連携・チャート |
通報くん 大手建設機械レンタル会社様 |
現場の一次情報の発信と問題解決までの追跡 | 役員・管理職の人が現場で気付いた問題点などを関係部署に通報、ステータスを管理する | 情報共有・写真・手書きメモ・ワークフロー |
セキュアドキュメント 大手警備会社様 |
外出先で資料を安全かつ便利に閲覧する仕組み | 重要文書持ち出しの際、上長の承認を得た上で、資料を持ち出す。営業資料の共有 | 文書・セキュリティ・ワークフロー |
ドライバー情報共有 大手運送会社様 |
顧客不在による再配達回数削減 ドライバーの俗人的ノウハウの効率的共有 |
過去のクレームや不在傾向、ビルの夜間入口などを地図上に声や写真で登録 | ナレッジ共有・位置情報・地図・写真・手書きメモ・音声 |
組合せ : 既存のものを組み合わせて新しいものを作る
あくまで経験則ですが、効果の高いアイディアは、下図のように、経営課題・業務課題、具体的な業務シーン、技術(スマートデバイスの特徴)の3つの要素が重なる部分に集中しています。
そこで、次のようなプロセスでブレーンストーミングをすることによって、効果の高いアイディアが期待できます。
まずは、自社の業務シーンをキーワードレベルで列挙してみてください。そして、そのキーワードとスマートデバイスの特徴(モビリティ、写真・音声、行動履歴・位置情報等)を組み合わせて、何ができるかを考えてみてください。きっと、いろいろアイディアが出てくると思います。思いつく限りアイディアを出したら、今度は①、②で発見した経営課題・業務課題を思い出してみましょう。さらに視点を絞ることで、より具体的なアイディアが出てくるのではないでしょうか。
ご参考までに、店舗業務の例を挙げておきます。下記のようなレベルでキーワードを列挙し、ブレーンストーミングを実施します。例えば、事務作業の軽減+接客(クレーム対応)+写真を組み合わせて、「クレーム商品の写真を撮って、写真上に手書きでメモをして関係者にすぐ共有できるようにすることで、レポート業務の負荷を減らすと共に、文字だけでは伝わらない情報を、写真によって伝えることができ、商品の改善に役立てる。」といったアイディアが出てきました。
組合せによるアイディア出しの観点組合せによるアイディア出しの観点 店舗業務の例
- 中高年層(50~70代)の客層拡大
- 売場での接客時間・質の向上
- 店舗のバックエンドでの事務作業の軽減・自動化
- 店員の情報武装
- 出退勤
- 朝礼
- 予算・実績管理
- 接客
(入会,商品説明,在庫照会,他店案内) - 会計
- 品出し
- 棚割り
- 配送
- スタッフ教育
- モビリティ
- 写真・音声・動画
- カレンダー(行動予定)
- 考動履歴・位置情報
- 電話、メール
- お財布(IC)、バーコードリーダー
- アドレス帳、電話帳
- AR、音声認識、顔認識、文字認識、指紋認証、音声認証脳波センサー
キーワードの全パターン組み合わせを自動的に行うための「キーワード組合せツール」(Excelマクロ)を準備しましたので、ご利用ください。
いかがでしたか。以上が「スマートデバイス活用アイディアを膨らませる4つの視点」です。
もっとアイディアを洗練させるために
- 意義・やる気
- 社会的意義、自分たちのモチベーションはどれくらいなのか
- 適合性
- スマートデバイスの特性を活かしているか
- スマートデバイスの利用シーンはデスクワーク以外の業務がメインターゲット
- 実現可能性
- 自社の強み・既存事業・経営課題への適合性を鑑みて判断を
- 収益性
- どのくらいのコストで、売上・効果はどれくらい見込めるのか
- FUN !!!
- B to Cの場合は特に「面白さ」「話題性」が求められます
- 新規性・競合との差別化要因有無を明確化