第2回:会議の設計の仕方 - アジェンダ編
はじめに
前回のコラムでは、会議全体の問題構造を分析し、どこから手をつけるべきかの見極めを行った。
今回は、さまざまな問題の原因となっており、かつ、比較的簡単に対処ができる「目的が不明確な会議」「アジェンダ(議題)のない会議」について考察する。
アジェンダレス会議の問題
目的が不明確な会議、アジェンダのない会議では、次のような問題がよく発生する。
まず、目的とアジェンダが事前に共有されていないと、だれも会議に向けて、考えをまとめ、事前に調査を済ませておくなどの準備ができない。結果、みんなその場の思いつきでベラベラと話し始め、話しが長くなってしまう。そして、ありきたりなアイデアしか出ないという結果になりやすい。
また、事前に目的とアジェンダの合意をとっておかないと、「そもそもこの会議をやる意味がない」とか、「そもそもこの進め方はよくないんじゃないか」とか、そもそも論を言いだす人が出てきて、そこでも時間を浪費してしまう。
そして、アジェンダのない会議は、時間管理が大雑把になってしまい、大抵の場合は会議が伸びる。
会議の設計のしかた
このような問題を防ぐためにも、会議が始める前に、目的とアジェンダはきちんと共有をし、参加者に共有しておくことが重要だ。
では、アジェンダはどのように準備すればよいのだろうか。ポイントは次の通りだ。
- まずはゴールイメージを明確にする
- なにが決まり、どのような状態になれば今回の会議の目的が達成されるのかを明確にし、言葉にする。会議の名前は、その目的を端的に表現したものにするとよい。
- ゴールに到達するために必要な要素を洗い出す
- ゴールイメージを明確にしたら、次はそこに到達するためには、どういったことを議論し、なにを決めなければならないのかといった要素を洗い出す。また、それを決めるためにはどういった準備が必要なのか、それをできるのはだれかといったこともリストアップしておくと、会議の人選や事前準備の依頼の際に役立つ。
- 会議で話し合わなければならないことと、そうでないことを切り分ける
- 上記で洗い出した項目は、すべて会議中にやるべきこととは限らない。むしろ、会議でなければできないことの方が少なく、事前の準備でやるべきことの方が多い。
このプロセスで、会議でやらなくてよいことを事前に切り分けることで、ムダな会議を減らすことができる。また、準備がきっちりできるので、会議のアウトプットの品質を高めることもできるだろう。 - 会議で話し合うことの順番を決め、時間配分を決める
- 会議で話し合うべきことが絞られたら、その順番と時間配分を決める。時間は最初のうちは余裕をもたせておいてもよいが、慣れてきたら徐々に時間を切り詰めてみよう。すると意外と時短とともに本質的な議論ができることが分かる。
- 事前にアジェンダを共有して合意を得る
- アジェンダが決まったら、それを会議の当日に発表するのではなく、事前に共有して、抜け漏れがないか、余分なものがないかを参加者に確認するとよい。 確認はメールやチャットでも十分だが、中には会議中に「聞いてない」といって、ちゃぶ台をひっくり返すような人もいる。その場合、事前に電話などで根回しをしておくのも1つの手だ。これもムダなひと手間だが、会議の参加者全員の時間をムダにするよりはずっとダメージが小さい。
- 参加者が事前に準備すべきことを伝える
- アジェンダを共有する際は、会議に参加するにあたって、どのような準備をするべきかを参加者に伝えるとよい。参加者全員が事前に準備をしておけば、会議がうまくいく確率が高まる。
アジェンダが事前に決められない場合は?
もちろん話し合ってみないことにはアジェンダさえ決められない場合もある。
そのような場合は、会議の最初にみんなでアジェンダを作る時間を設けるとよい。
アジェンダを洗い出してみた結果、会議を開催する準備が全然できていないこともある。その場合は、予定時間一杯まで使い切る必要はなく、準備の分担と次回日程を決めた上で即時解散するとよい。
アジェンダが必要な会議とそうでない会議
では、全ての会議でアジェンダが必要なのだろうか。実はそうともいいきれないのが、問題を複雑にしている。
例えば、他部門の人と雑談をしている最中に、ふとアイデアが思い浮かんだり、問題が解決したりすることがないだろうか。
こういった偶然の発見や出会いをセレンディピティと言って、大事にしている会社もある。
とくに企画の初期のコンセプトを探っているような段階では、アジェンダに従って、時間通りに終わらせるよりも、臨機応変に「何か」がありそうなテーマを掘り下げてみるのがよいこともある。
混ぜるな危険
このようにゴールが何かさえ決まっておらず、それを決めるのがゴールという会議では、アジェンダなしで、臨機応変に雑談も含めながら話をするのがよい場合もある。しかし、日常の会議に雑談を混ぜても効果が薄く、無駄が多い。
大抵の業務は特定の人の能力に依存せず継続可能なように、ルーティン化されており、ゴールを決めるのがゴールのような会議を行っている人はごくわずかだ。また、日常の会議はメンバーが固定化されやすいため、偶然の発見も産まれにくい。つまり、日常の会議では、きちんとアジェンダを定めて時間通りに進行した方がよい。
セレンディピティを促す
では、偶然の発見を促すにはどうすればよいのだろうか?
日常の会議とは別に、雑談の機会を増やすという方向性がよいだろう。
例えば、いつもと違う顔ぶれでランチに行ってみたり、何人かで同時にティータイムやコーヒータイムをとってみたりすると、有益な雑談が産まれやすくなる。
また、席の近くに、小さくて持ち運びのしやすい丸イスを置くと、席が遠くの人でも簡単な打ち合わせがしやすくなる。席の周辺で、珍しい人が話していると、周囲の席の人とも雑談が発生しやすくなるだろう。
こういった取り組みはITの会社ではよく実施されており、効果を感じたという声も多い。IT以外でも、デスクワークが多いような業種の方はお試しいただく価値があるのではないだろうか。
(株)共同通信社 b.(ビードット)より転載
※本記事は、2019/3/4時点で共同通信社の外部メディアに公開された記事を、許可を得て転載しています。