第3回:会議の設計の仕方 - 人選・環境・時間編
はじめに
「毎週30分だけ定例をやりましょう」。こんな発言を聞いたことがないだろうか。
仮に15人で30分の定例会議を1年続けたとすると、会社が支払うコストは、税金・社会保障費などを含めて100万円を超える。
会社のお金を使って100万円の買い物をする際は、もっと慎重に費用対効果等の検証がなされ、きちんと効果が出るように準備と努力をするはずだ。
会議についても同じく、相応の準備が必要ではないだろうか。
会議の準備の際にポイントとなるのが「会議の設計」であり、前回は、アジェンダ(議題)のつくり方を紹介した。
今回は人選・環境・時間という観点から、会議の設計をする際に役立つポイントを紹介する。
種類別に考えると
会議の種類によって、望ましい人選・環境・時間帯が異なるため、それぞれのパターンでのオススメをまとめた。
意思決定・交渉・商談
商談では意思決定ができるキーマンと話ができるかがカギを握るため、営業担当者はキーマンとの接触のために多くの労力を費やしている。
しかし、社内会議でそのような努力をしているだろうか? 社内の方がずっと簡単に意思決定者に接触できるはずなのに、意思決定をする権限のないメンバーだけで会議が行われ、結論が出ないまま終わってしまうのをたまに目にする。意思決定が目的の会議で、意思決定者を呼ばないのは致命傷だ。
このような人選ミスを防ぐためにも、前回紹介したアジェンダ設計が役立つ。事前にアジェンダを洗い出しておけば、そのアジェンダについて意思決定をする権限があるのがだれかを特定することができ、その人を会議に呼ぶようにすればよい。
次に会議の環境の選び方について紹介する。意思決定会議では、必要な情報をその場で説明したり調べたりすることもあるため、机やディスプレイのある普通の会議室を選び、ディスプレイに情報を映して同じものを見ながら議論するとよい。
会議の時間帯の選び方については、『時間の使い方を科学する』(PHP新書)という書籍が参考になる。同書によると、論理的な判断を必要とするタスクは、10時から14時の時間帯に成績がよくなる傾向にあるとのことだ。そのため、意思決定が目的の会議はこの時間帯に行うのが無難だ。
報告
報告のためだけに会議を開くのは無駄が多いが、報告書だけでは伝わらないことがあるのも事実だ。
もしチーム単位で席が割り当てられているなら、会議室に移動せず、自席で報告を済ませるのがおすすめだ。そうすれば上司に報告をするついでに、周囲のチームメンバーにも状況を共有できる。周囲のメンバーにとっても、報告会議に呼ばれて時間を拘束されるよりずっとましだろう。
また、バラバラと報告されると上司の仕事の妨げになるため、上司にオフィスアワーを設けてもらい、皆が揃う時間帯にまとめてやるとよい。
周知・連絡
関係者が多いと、全員を集めて周知をするには非常にコストがかかる。しかし、文書を送るだけではなかなか伝わりきらないこともある。
このような場合は、朝会や夕会などみんなが集まる場所があれば、重要なもの(トップ3が目安)だけ30秒以内で要点をまとめて口頭で伝えるとよい。話が長くならないよう、詳細は文書や動画にまとめて後から確認できるようにしておくことも大事だ。
前述の『時間の使い方を科学する』によると、記憶が必要なタスクの成績は夕方に高まる傾向にあるそうなので、このような周知は夕方にやるとよいかもしれない。
また、重要でない周知・連絡であふれかえってしまわない工夫も必要だ。たとえば、一人が受け取っている周知・連絡の数を可視化したり、周知をするために現場でかかっている工数を可視化したりすると、必要性の薄い連絡を避け、連絡の質を上げようという方向に皆を動かすモチベーションとなる。
相談
定例会議を開催すると、会議中に相談をされることがあるが、相談は会議には向いていない。問題が発生したその場で相談をすれば、すぐ解決したかもしれないことを、後から会議の際に相談をされても、遅すぎるし適切な判断ができないことも多い。
相談は問題が発生したその場で解決をするのが理想だ。たとえば、商談の最中に関係部署に相談が必要となった際、その場で電話やチャットなどで確認をすれば、持ち帰り相談をなくし、商談をスピーディーに進められる。
では、だれに相談をしたらいいかわからない事象が発生した際はどうすればよいのだろうか。このような場合は、上司や社歴が長い人に、だれに相談すべきかを聞いてみると、適切な人を紹介してもらえる可能性が高い。
このとき注意すべきは、自分が相談しやすい人に相談をしないことだ。よく目にする失敗例が、新人が他部署に配属された同期の新人に相談をするケースだ。同期には聞きやすいが、同期なのだから自分と同じぐらいの経験値しか持っておらず、適切な答えが返ってくるとは限らない。相談をするなら、その内容に最も精通した人に聞くべきだ。
アイデア出し
アイデア出しの際は、ブレインストーミングをすることが未だに多いかもしれないが、対面でのアイデア出しはあまり効率がよくない。他の人が発言している最中に発言ができないし、他の人の意見に流されて平均的な結論に終始してしまうことが多いからだ。また、参加者からアイデアを引き出すファシリテーションの訓練を積んだ人が少ないのも効率がよくない原因のひとつだ。
そのため、アイデア出しをする際は、事前に各自でアイデアを出しておいて、それを持ち寄り、対面ではそれらのアイデアの深掘りや結合、優先度の合意などに集中した方がよい。
アイデア出しをするメンバーは、観点・職種・専門性が異なる人たちを集めると、より多様なアイデアが出やすくなる。
では時間帯についてはどうだろうか。ある調査によると、創造的なタスクを行う場合、集中力が高まる時間帯よりも、集中力が高まる前の頭がスッキリしない時間帯の方が成績が高かったそうだ。また、別の調査によると、しばらく集中して取り組み、生産性の低下を感じ始めた後に、切り替えてリラックスをすると、創造的なアイデアや問題解決の方法をひらめきやすい状態になるとの結果もある。
よって、アイデア出しは、集中しやすい日中の時間帯を避けて、早朝や夕方にやるのがよい。これは経験則だが、金曜の夕方にアイデア出しをすると、皆がリラックスした雰囲気になって、より盛り上がるので、一度試してみてはどうだろうか。
まとめ
今回は代表して5つのタイプの会議での設計の仕方を取り上げた。この考え方を応用すれば、その他の会議に適した設計をすることができるだろう。
会議は集まった人たちで作り上げるものなので、準備さえすれば必ずうまくいくものではない。しかし、きちんと設計をすることで大きな失敗やムダを予防することができる。もし、ムダな会議が多いと感じているなら、「会議の設計」のやり方を取り入れてみてはどうだろうか。
(株)共同通信社 b.(ビードット)より転載
※本記事は、2019/3/19時点で共同通信社の外部メディアに公開された記事を、許可を得て転載しています。