第5回:普段使いできるグラレコ(^o^)
「なんだ、これは!?」
最近、セミナーや勉強会などのイベント開催レポートに、イラストで書かれた議事録のようなものをたまに見かけるようになった。見栄えのよい絵で描かれているので、目を引き、ついつい見てしまう。これが文字だけの議事録だったら、まず見向きもしないだろう。
この絵で書かれた議事録のようなものは、ちまたではグラレコというらしい。ただ、これを知ったからといって、絵心もないし大きなイベントを主催することもない自分には、特に関係ないと思っていた。
それからしばらくたち、この連載をきっかけに、グラレコの取材先を探すようになった。グラレコといっても、大きなイベントなどで目にする「よそ行き」のグラレコは、この連載には向いていない。もっと日常の会議で使えるような“普段使い”のグラレコを実践している人の話を伺いたいと思っていた。
そのイメージにピッタリの方に取材をすることができた。グラフィックコミュニケーターの本園大介氏だ。本園氏は会社勤めもしながら、グラレコを広めるワークショップや研修などを開催している。日頃、会社勤めをしていることもあって、実用的な話を伺うことができた。
グラレコとは
会議やイベントなどで話された内容を、絵で表現して記録を取っていくものだ。今回の取材の内容もグラレコで描いていただいたので、サンプルとして掲載しておく。
グラレコの全体
グラレコの効果
グラレコを日常の会議で使う効果として、一番大きいのは、人それぞれの認識の齟齬(そご)が可視化できることだ。
たとえば「空」という言葉から思い浮かべるものは、人によって異なる。田舎で暮らしている人にとっての空は、山の上の晴れ渡る空かもしれないし、都会で暮らしている人にとっての空は、ビルの間から見えるかすんだ空かもしれない。
私のフツウ
このように、同じ言葉でも、その人の経験によって、思い浮かべるものが異なる。普段コミュニケーションを取る際、「わたしのフツウ」は「みんなのふつう」ではないことを忘れがちだ。
これを絵にしてみると、違いが一目瞭然となる。これがグラレコの効果だ。
ビジネスの世界では、小さな認識の齟齬でも、見過ごすと大変な問題になることがある。たとえば、IT業界でよくある話だが、要件定義の際に生じた認識の齟齬に気付かず、次の工程に進んでしまうと、その修正コストは十倍、百倍、千倍と拡大していく。
DEATH_MARCH
コミュニケーションを可視化し、認識の齟齬をなくすというのは、ビジネス面でも非常に大きな効果を発揮する。
グラレコが向いている会議・向いてない会議
グラレコが万能かというと、もちろんそうではない。合意形成の手段として使うのにはよいが、議事録代わりとして証拠を残すのには向いていない。すべてを網羅的に記録していくものではないし、ロジカルな文章がないので、会議に出席しなかった人に正確に意味が伝わるとは限らないからだ。
他方、グラレコはエモーショナル(感情・感覚的)なものまで表現できる。そのため、方向性を決める会議やUX(ユーザ体験)・CX(顧客体験)などを決める会議に向いている。
グラレコde会議
今日からマネできるグラレコの基本テクニック
では、グラレコを自分でもやってみようという場合はどうすればよいのだろうか?今日からマネできる基本テクニックを教えていただいた。「要素」「つなぎ」「囲み」の三つだ。
要素・つなぎ・囲み
一つ目の要素とは、人やモノなどのアイコンを描けるようになることだ。人を描く際は、表情や動きなどまで表現できると、利用の範囲が広がる。
二つ目のつなぎとは、要素同士の関係性をつなぐものだ。矢印に「♡」をつけると関係性がわかりやすくなる。
三つ目の囲みとは、要素をグルーピングするものだ。線で囲むだけでもよいし、背景に場所を表すような絵を描けば、どういった場所での出来事なのかのコンテキスト(状況)を示すこともできる。
この三つができるようになれば、あとはそれらを応用するだけで、いろんな表現ができるようになる。表現のバリエーションを増やすには、他の人が描いたものを参考にするとよい。
まとめ
今回は、取材をしながらグラレコを描いてもらって、その絵を見ながらさらに話がはずんだ。認識の差異を減らせるといった実用的な効果もあるが、なにより、グラレコには会議を楽しく明るい場に変える力を秘めているように感じた。会議の雰囲気や共通認識に課題を感じている人は、グラレコを始めてみてはどうだろうか。
(株)共同通信社 b.(ビードット)より転載
※本記事は、2019/5/21時点で共同通信社の外部メディアに公開された記事を、許可を得て転載しています。