第1回:DXブームに内製化ブーム?市民開発の成功編
Introduction
みなさんこんにちは!DX/デジタル化調査裏話、2022年1月に調査をした「市民開発の実態」について3回シリーズでお届けします。
(調査をまだお読みになっていない方はぜひご覧ください!https://www.dreamarts.co.jp/form/dair-wp6/)
今回も調査レポートには掲載しきれなかった裏話や、ドリーム・アーツメンバーが実際に体験した事例を交えて、本調査をもう一段深掘り。調査プロジェクトメンバーの金井がお届けします。
1.「市民開発」という言葉ご存知ですか?
突然ですが皆さん、「市民開発」という言葉をご存知でしょうか?今回調査のタイトルには入れてみたものの、意外に知らない人が多いこの言葉。「市民開発」とは、ITの専門知識がない業務部門の社員による、ノーコード・ローコードツールを用いたアプリケーション開発のことを指します。
今回なぜこのテーマで調査をしようと思ったか、少し背景をお伝えします。前回の調査では「ITベンダー依存」をテーマにしました。(前回のレポートはこちら:https://www.dreamarts.co.jp/form/dair-wp5/)
調査対象者は大企業のITシステム決裁者1,000名。6割が「ベンダーに頼っている」という自覚があり、さらに「ベンダー頼り肯定派」が6割。一方で「依存」を認識しつつも実は「自律したい」というジレンマを抱えた本音があり、大企業はシステムの内製化や市民開発に動き出しつつあることも明らかになりました。新型コロナウィルス感染拡大もあり、企業のデジタル化が一気に進み市民開発の先行事例も続々と出てきました。IT人材不足もあり市民開発にチャレンジする企業が増えています。
ドリーム・アーツもノーコード・ローコードの製品を開発・提供していますが、「デジタルの民主化(https://www.dreamarts.co.jp/democratization/)」に賛同するお客さまが増えています。
とはいえ、今はまだ過渡期。大企業の市民開発におけるチャレンジはうまくいっているのか。システム内製化や市民開発はブームになりつつあるが、かつてのEUC(End User Computing)問題なども記憶に残るなかで、同じ失敗を繰り返さないために各社はどんな取り組みをしているのか?市民開発が発展するとIT部門の役割はどう変わるのか?などさまざまな疑問が出てきたこともあり調査に踏み切りました。
2.ノーコード・ローコードツールを使った市民開発はどのくらい進んでいるのか?
今回の調査は、市民開発の現状と課題の詳細をつかむことをメインの目的としました。そのため、「ノーコード・ローコードツールを知らない」という人を除外。さらに「自社のDXの現状を把握していない人」も除外しています。少し厳しいフィルタリングを最初に設けています。
とはいえ、どのくらいの方がノーコード・ローコードツールを知らないかは重要な数字と思いますので、それをまずご覧いただきましょう。
大企業にお勤めの27%の方がノーコード・ローコードツールを「知らない」と回答しました。
私個人の感覚としては「意外に認知度は高いな」という印象でした。4〜5割ほど知らない人がいるのではないかと密かに思っていたのですが、予想ははずれました。確かに最近IT系のメディアだけでなく日本経済新聞などの経済誌でも「ノーコード・ローコード」というワードが出てくるようになっていますね。
(余談ですが、本調査が日本経済新聞に取り上げられました:https://t.co/cTJKoXqwHS)
このように「ノーコード・ローコード」の認知度の高さは、ITの専門家「以外」の人がITのパワーを活用できる時代がやってきていると言えるでしょう。
では、実際にノーコード・ローコードツールを利用して市民開発に取り組んでいる人たちはどのくらいいるのか?その結果がこちらです。(上記「ノーコード・ローコードツールを知らない人」は除外しています)
(自社のDX 推進状態を把握し、かつノーコード・ローコードツールを知っている1,000名)
ノーコード・ローコードツールを知っている人が前提になりますが、市民開発を「実施済み」は5割を超えました。「検討中」を含めると7割、「興味がある」を含めるとなんと9割弱。この数字すごいですね。大企業は市民開発に前向きであることは明らかです。
(自社のDX 推進状態を把握し、かつノーコード・ローコードツールを知っている1,000名)
また、DX推進企業の約5割がノーコード・ローコードツールを導入済または検討中という結果でした。
DXに積極的な会社はノーコード・ローコードツールの活用も視野に入れているのでしょう。
3.市民開発の「成功」って一体なんだろう?
市民開発の動きが加速しているとは言え、実際にこのチャレンジはうまくいっているのか気になりますね。業務部門自らデジタル化を行う市民開発は成功しているかどうか聞いてみたところ、ショックな数値が出ました。
「成功している」はたったの18%!少ない…。対して「成功していない」と答えた人は22%。
そして6割と一番割合が多かったのが「どちらとも言えない」でした。
各社成功の定義は異なるとは思いますが、まだスタートしたばかりで判断はしづらいという印象ですね。
ということで、今回は「市民開発の成功」にスポットライトを当てましょう。
この18%の成功者に「なぜ成功しているか」をフリーアンサーで聞いてみました。一番多かったのは「業務が効率化された」「便利」など、自分の業務が効率化されて楽になったことを実感しているご意見でした。そして、「ノーコードで使い勝手が良い」など、テクノロジーの進化が成功につながっているご意見もありました。
さらに興味深いと感じたのは「各部門が自発的に提案している」「生き残りを意識して各部門の部下自身が懸命に業務を行い好転」というように、社員一人ひとりが自律して積極的に動いているというご意見です。
このように「市民開発の成功」については皆さんの意見はさまざま。一般的には一部署において業務部門のデジタル化ができたらそれで成功と言えなくもないでしょう。しかし、それだけでは勿体無いですし、かえって個別最適・システム乱立など、かえって大きな問題を引き起こすことになってしまうかもしれません。
私たちが推奨する「デジタルの民主化」の成功は以下のようなイメージです。
「デジタルの民主化」の成功は、単なる「市民開発の成功」に留まらず、その一歩先を見据えた成功イメージです。
組織全体あちらこちらでデジタル化が進み、社員一人ひとりがデジタルパワーを獲得
→各人が自律して自分の業務を考え、変革マインドが育ち日々積極的に業務を改善
→縦割り組織の壁が崩れ水平レイヤーでデジタルパワーを活かした協創が生まれベストプラクティスが共有され、磨かれる
市民開発を開始している皆さん、このステージに当てはめると今どのあたりですか?デジタルが前提となる時代、ぜひステージ5を目指していただきたいです。
ステージ1や2の段階ではまだまだ「個別最適」の状態です。全体最適で、なおかつ全社のデジタル化パワーがグッと上がるのはステージ4以降でしょう。
ステージ5の段階では、各部門に業務デザイナーが存在し、自律的に業務がデジタル化され、改善スピードも加速します。データやプロセスが全社で共有され、業務・アプリが部門間で連携し始めます。仕組みが連携し始めると自然とコミュニケーションが生まれ、大企業にありがちな部門間の壁が崩れ「協創」が始まります。外部に委託するのと比較して失敗コストが低いので、チャレンジする機会が増え新たなアイデアも生まれやすくなります。全社でデジタル・リテラシーが向上し、さらに変革マインドが広がります。
なんだか良いことづくめですね!ですが、焦ってはいけません。
ステージ5まで一気に到達するのはそう簡単ではありません。しっかり経営層を巻き込み、IT部門が俯瞰して全体を把握しながら業務デザイナーをサポート・育成すれば、1年でステージ5に近いところまで到達するお客さまはいらっしゃいます。
アンケート結果からは、さまざまな成功の定義が見えましたが、単なる「市民開発の成功」というだけでなく「デジタルの民主化の成功(ステージ5)」までを目指していただきたいと思います。
「市民開発・デジタルの民主化なんてうちの文化に合わないよ」と言う方がたまにいらっしゃるんですが、企業文化・風土は仕組み・仕掛けで変わるのです。
成功までの道は少しハードルが高く、時間もかかると思いますが、まずはステージ1の「1部署の小さな成功」がカギになると考えています。覚悟して焦らずに進めてください。ドリーム・アーツが伴走します!
さて、今回は市民開発のポジティブな側面「成功」について見てきましたが、次回はネガティブな側面に迫っていきましょう。「市民開発?とんでもない!不安でしょうがない・・・」という方々のご意見もありました。調査データをもとに掘り下げていきます。お楽しみに!
大企業の“ヤバい”市民開発の実態
6割が既に取り組みを開始し、75%が「IT部門による管理」を望む市民開発の実態は?企業文化による二極化。コミット・方針の無いコンサバ群のヤバい現状を明らかにした、大企業の従業員1,000名に聞いた“DX/デジタル化”に関する調査レポート第3弾。