異業種からIT業界へ!後編
異なるバックグラウンドが「多様性の強み」に
銀行、小売業にいた“IT経験ゼロ”の2人が、いきなりIT業界に転職した納得の理由
ドリーム・アーツに中途入社してきた人たちのバックグラウンドは多様です。長くIT業界で働いている人もたくさんいますが、異業種から飛び込んできたメンバーも珍しくありません。現在、クラウドサービス「Shopらん」の営業を担当する鈴木利歩さんとカスタマーサクセスを担当する若井咲子さんも、それぞれ銀行と小売業から加わっています。2人に、転職のきっかけや入社前に抱えていた不安、ぶつかった壁や仕事のやりがいなどについて語ってもらいました。
異なるバックグラウンドが「多様性の強み」に 銀行、小売業にいた“IT経験ゼロ”の2人が、いきなりIT業界に転職した納得の理由
── 入社して驚いたことはありますか。
鈴木
異業種なので、いろいろ違うだろうとは思っていたのですが、働き方がこれほど自由だとは思っていませんでした。急に休んでも大丈夫だとか、リモートでも出社でもどちらでもいいとか。
若井
働き方だけでなく、仕事の進め方も自由です。「このお客さんの導入支援、お願い」とだけ言われて、どうやって進めるかは自分で決める。裁量の幅が非常に広いので、その分、自分で責任をもって進めなくてはいけません。
ざっくりした業務の流れはあるんですが、「とにかくこれをやればいい」というような詳細なタスクの一覧はないので、最初は大変でした。「お客さんのShopらん導入をサポートする。活用度を上げるための支援をする」という、抽象的な業務内容はわかっていたものの、実際に何をすればいいのかが、全然わからなくて。
そんな状態だったので、入社2カ月目くらいに上司から「とりあえずやってみましょう」と、お客さんの導入案件を任された時には、正直「よくわからないから不安だな…」と思いましたね(笑)。
左:小売業から転職した若井さん、右:銀行から転職した鈴木さん
── うまくいきましたか?
若井
実はちょっと失敗しちゃって……。
前職では「この日までに、この作業をやってください」というタスクがたくさん与えられて、それを処理していくことが多く、「設定された期限が絶対」という感覚がありました。それで、最初に設定されたスケジュールを守ろうと、先方の状況をあまり理解しないまま「次はこれをやります」「来週はこれです」と、どんどん進めようとしてしまったんです。
すると、しばらくしてお客さんから、「私たちがあまり理解できていないままで進んでいるのは、わかっていただけていますよね?」と言われ、お客さんの理解の度合いよりも、スケジュールを優先してしまっていることを、遠回しに指摘されてしまいました。「期限内に終わらせることよりも、お客さんに寄り添いながら進めることが大事なんだ」ということを、そこで学びました。今は、お客さんごとの課題や理解度に合わせた提案をしながら、しっかりサポートしようという気持ちで進めています。
自由度が広がり「“違う脳みそ”を使うようになった」
鈴木
私の場合、前の職場では、営業もほとんどマニュアル化されていて、迷うことがありませんでした。お客さんからの質問にも、決められた答えがマニュアルに書かれていたので、その通りに答えればよかったんです。
ですからドリーム・アーツでも最初は、「お客さんから質問されても、ただ聞かれたことに答えればいいのだろう」と思っていました。例えば、機能に関する質問があれば、その機能について説明しさえすればいいだろうと。今思えば、「具体と抽象」でいうところの、「具体」でしか捉えられていなかったわけです。でも、もっと抽象度を上げ、「お客さんはどんな意図で、なぜこの質問をしているのか」と深掘りする必要があることがわかってきました。
ドリーム・アーツでは、毎日しつこいくらいに「具体と抽象」が話題になり、普段の会話でも「もっと抽象度を上げて考えよう」と言われます。ですから今は、言われたこと一つひとつに、疑問を持つようになりました。そこをちゃんと考えながら仕事をしないと、後々自分が困ることになるんですよね。
若井
私もそうでした。最初のうちは、「お客さんに求められた通りの対応をすればいい」という、“御用聞き”みたいな対応をしていたのですが、最近は「お客さんはこの機能が欲しいと言っているけれど、本当にその機能が必要なのか?」「そもそもお客さんが実現したいのは何なのか?」と、抽象度を上げた会話ができるようになってきました。こうした会話ができると、お客さんの納得感が違ってきますし、より深い支援ができるように感じます。
業界は違っても基本は同じ
── 前職の経験は役立っていますか?
鈴木
業界は違いますが、同じ営業職なので基本的なところは同じです。
若井
私もそう思います。
私も店舗勤務の時に本部とのコミュニケーションやタスク整理にはとても苦労したので、お客さんにそういった具体的なエピソードを話すと「若井さんがそういうところを理解してくれていてよかった」と言われたりします。Shopらんの製品知識を伝えるだけでなく、「現場ではこういった大変な場面があるから、この機能が使えますよね」など、小売りの実際の業務をイメージしながら話すようにしています。
鈴木
若井さんはラポール(相手と心を開き合える信頼関係を築くこと)がすごく上手ですよね。お客さんの商品を買って使ってみたり、お客さんが提供しているアプリを入れて「今日はこんな情報が出ていましたね」と話題にしたりしていて。お客さんはすごく嬉しそうです。
若井
それは前職の経験が生きているかもしれません。お客さんが見たり使ったりするものを、同じように見たり使ったりしていると、会話が進みますから。
視野が一気に広がり「想像力」を求められる
── 転職して自分自身が変化したところはありますか。
鈴木
BtoBの仕事は、より一層想像力が求められるように思います。前職は個人のお客さんが相手だったので、その人がいいと言えば成約になります。それが今は、目の前の担当者がいいと言っても、その上司や、関係する部署、会社全体がどう受け止めているのかを絶えず考えなくてはいけません。ステークホルダーが多いので、見るべき範囲がぐっと広がった気がします。
若井
私も、目の前のお客さんだけではなく、その後ろにも多様なお客さんがいることを意識するようになりました。お客さんから上がった要望を吸い上げて開発担当に伝え、Shopらんの機能追加を依頼することがあるんですが、目の前のお客さんから言われたからと言って安直に追加開発してもらうわけにはいきません。「このお客さんから求められているこの機能は、それによって本当にあるべき姿を実現できるのか?」など、常に考えるようになりました。
私たち抜きでお客さん同士がつながり始めている
── 仕事のやりがいはどんなところにありますか。
若井
お客さんからは、「DXを進めて効率化し、お客さんと関わる時間や、売り上げを上げるための時間をもっと増やし、小売業を盛り上げたい」といった、熱い思いをお聞きすることが多いんです。それを直接聞けるのは本当に楽しいです。
鈴木
わかります!
若井
そういう方たちの手助けになれるよう頑張りたいと、心から思います。
鈴木
最近、Shopらんのお客さんのユーザー会も活発に行っているんですが、そこで初めて会ったお客さん同士が意気投合して、交流しているという話をよく聞くんです。私たちが知らないところで、つながりが広がっているみたいで。お客さん同士がただ仲良くなるだけでなく、その先には企業間でどんどん意見交換しながらみんなで業界を盛り上げていく状態になったら素敵ですよね。お客さんにはユーザー会をそんな形でも活用して欲しいと思います。
若井
私のところにも連絡が来ました。「今から○○社さんたちと飲みに行ってきます」と言われて、「いってらっしゃいませ!」とお返ししました。こういう場面に立ち会えるのは本当にうれしいですよね。つくづく、この仕事でよかったと思います。
鈴木
そうですよね。私も、転職してよかったと思います。それに、異業種からの転職だからこそ、違う視点で物事を見られるというのは強みになるし、自分の視野も活躍できるフィールドも広がります。
転職してから、つまずいた場面はいくつかありましたが、その度に周囲のメンバーに支えられて乗り越えることができました。これまでは正直、自分の業務だけで精一杯でしたが、今後は私が周囲のメンバーを支える側に回って、頼られる存在になれるよう頑張りたいです。
異業種からの転職を「受け入れる側」の視点
上司の川野さんも異業種からのメンバーと一緒に働くことで多くの気付きをもらえると語る
若井さんと鈴木さんの上司である川野さんに異業種からの転職を「受け入れる側」の視点で語ってもらいました。
Q
異業種からの転職者を受け入れる際、指導する上司として気をつけていることなどありますか?
A
ドリーム・アーツに異業種から転職される方は最近特に増えており、皆さん活躍されているので、「業種が違うから気をつけなくては」というバイアスは全くないですね。
それよりも、チームに新しい風が吹くだろうという期待の方が大きいです。
ただ、やはりドリーム・アーツでの業務や考え方をインプットするなかで、業界の違いを感じることはあります。(業界の違いというよりも、会社の文化の違いの方が大きいかもしれませんが……)
ドリーム・アーツは、お客さんの本質的なゴールを見据えて支援することを目指しているので、時にはお客さんに踏み込んだ質問をしなければなりません。たとえばお客さんから「こういうことをやりたい」と具体的な要望が挙がったときに、お客さんが言っていることを「ではそれを実現させましょう」とそのまま受け入れるのではなく、「それはどういった課題からですか?」「そもそもその業務のあるべき状態って、こういうことですか?」と問いかけます。具体的なお話を一度抽象化して、そもそも本当にやりたいことがなんなのかを聞き出し、“本来の目的”に意識を合わせてから真の解決策を探るのです。
特に銀行など、やるべきことが決まっている世界では、お客さんの要望に「疑問を持つこと」はほとんど許されず、言われたことをルールに則ってマニュアル通りに進めることが求められます。
2人とも、当初そういった面で苦労していた印象があります。しかし、先日2人の商談に同席した際、しっかり踏み込んだ質問をしながら、抽象度をあげて本来の目的に向かって会話を進めているのを目の当たりにして、着実に成長しているなと感動しました。
Q
異業種から来た人がいることでチームに変化はありましたか?
A
お客さんの課題1つとっても、多角的な視点で見ることができ、支援の範囲も深さも増していると思います。
たとえば、業界外の私たちから見ると簡単そうに見える業務が、小売業界出身の若井さんに聞くと、実際は非常に大変な業務だとわかり、「もっと積極的に支援しよう」と判断できたことがあります。また、銀行出身の鈴木さんは、監査的な丁寧で厳しい目線で物事を指摘してくれるので、その業務の裏側にある制約などをより正確にイメージすることができます。2人がもたらしてくれるリアルな現場の目線によって、お客さんの業務の解像度が高くなります。これが、バックグラウンドの異なる人が集まる「多様性」の強みなのだと感じます。
Q
異業種でIT業界を目指している人に一言お願いします
A
IT業界は「専門知識がないと難しい」と思う方も多いと思いますが、全くそんなことはありません。(そんな自分も文系出身です。)
ITは世界を変える力を持っており、その影響範囲はとても広いです。ITを活用することで、お客さんが日々の業務をミスなく、より便利に、効率的にこなし、最終的には本来注力したい本質的な業務に時間を費やすことができる。それはとてもハッピーなことだと思います。
ITのパワーでより多くの人を助けたい。異業種であってもその「想い」があれば全く問題ありません。異業種からもIT業界にどんどんチャレンジしてほしいです。
インタビュアー金井の感想
小売業界と銀行からITの世界へ。働き方もカルチャーもかなり違う。全く別の環境から来た二人は、日々奮闘しながら自らを変革していました。(しっかり『具体と抽象』の思考も染み込んでいて嬉しいです)
そして受け入れるドリーム・アーツ側でも、異なる視点を持った人が入ることで新たな化学反応が起きていました。私自身も今回のインタビューを通して新たな気づきをもらっています。
異業種からの転職を受け入れることは、企業にとって貴重な「認知的多様性」を獲得できる機会だと思います。とはいえ、この「外からの目線」も時間が経つと薄れてしまうものなので、二人にはバックグラウンドの原点としてそれぞれの業界を継続してウォッチし、定期的にチームにスパイスを投入してほしいなと感じました。
今後も二人の活躍を期待!
プロフィール
大手SIer出身。データ分析・活用をきっかけにシステムエンジニアからマーケティングに職種をチェンジ。現在はコーポレートマーケティング業務で自社のブランディング確立に奮闘中。