AI時代のエンジニアには観察力・共感力が必要!
ドリーム・アーツCTO石田 健亮インタビュー
ドリーム・アーツ CTO 石田 健亮のインタビュー記事が『Tech Team Journal』に掲載されました。企業がDXを進めるために必要なことや、エンジニアに必要な能力を語っています。 ぜひご覧ください。
AI時代のエンジニアには観察力・共感力が必要!
株式会社ドリーム・アーツは「協創する喜びにあふれる人と組織と社会の発展に貢献する」 をコーポレートミッションに、大企業に向けたクラウドサービスを提供しています。大企業が変わるために「デジタルの民主化」を推奨し、企業文化の変革を進めています。
長年にわたって日本の大企業を支えてきたドリーム・アーツで、取締役 執行役員CTOを務めているのが石田 健亮さんです。石田さんに、企業がDXを進めるために必要なことや、エンジニアに必要な能力などをうかがいました。
DXに必要な「デジタルの民主化」
── 御社の調査によると、DXを推進している大企業の約5割がノーコード・ローコードツールを導入または検討中とありました。なぜDX推進企業は、ノーコード・ローコードツールの導入に積極的なのでしょうか?
そうせざるをえない状況にあるからだと思います。IT人材の不足は、さまざまな調査で明らかになっています。
そんななかでコロナ禍に入り、リモートでやらなければならないことが急激に増えました。
システム開発を情報システム部門に頼むと、予算化してRFP(提案依頼書)をつくってから構築するので、完成までに1-2年くらいかかってしまいます。このスピード感では厳しいです。自分たちの業務で使うものなら、ノーコード・ローコードツールを使ってできます。それをユーザーさんたちがわかってきて、広まっていきました。
自分たちでノーコード・ローコードツールを使ってつくったものが動いて、それが人の役に立つと喜びを感じます。そうすると「あれもやってみたい」となり、ポジティブに循環していくんです。こうしたことがコロナ禍以降、顕著に起きていると思います。
── 新型コロナウイルスの影響でリモートワークが進んだことが要因の1つでもあるわけですね。多くの企業でDXに取り組んでいますが、なかなか進まないのが現状です。DXの推進に必要なことはなんだと思われますか?
社内にDX推進部のような部署がDXを進めるというよりは、いろいろな役割の人たちが自分たちの業務を仕組み化する観点を持つことが大事です。
当たり前ですが、現場で働いている人が自分たちの業務のことを一番よくわかっています。その人たちが「デジタル化すること」の本質を理解する。これが第一歩だと思うんです。デジタル化することは、仕組みをつくりはじめ、それをしっかりと構造化したデータで保存して、仕組み化していくことです。
やっていることは、昔からあるBPR(ビジネスプロセス・リエンジニアリング)とそれほど変わりません。それを自分たちでもできると気づくことがカギになります。
そのためには、やってみたらできたとか、コンピュータは難しいと思っていたけどそれほど難しくなかった、などの成功体験が必要です。こうしたことが草の根的に広まることを、わたしたちは「デジタルの民主化」と呼んでいます。
デジタル技術はITの専門家が持っている特殊スキルで、それを分け与えてあげるような状況から、誰でも使える状況になると視点が変わります。こうして、DXが進んでいくんです。
AI時代に求められるエンジニアのスキル
── 最近、ChatGPTなどのAIが注目を集めています。AI時代に求められるエンジニアのスキルは、どのようなものになると思いますか?
わたしもChatGPTは大好きで、課金して毎日使っています。20年以上、エンジニアとして仕事をしていますが、最近のAIの進化にはとても驚いています。この感覚はインターネットが日本で普及しはじめて、Webブラウザが誕生したころの空気感に近くて楽しいですね。
たとえば、新しくソフトウェアをつくるためにコードを書くとします。知らない環境や言語であっても、ChatGPTに聞いて少し手直しすればつくれるようになりました。
1週間くらいでつくれると思っていたものが、1日でできるくらいのスピードです。劇的な進化ですよね。
こうした技術を活用できるエンジニアと活用できないエンジニアとでは、大きな差がつくと思います。いままでであれば、エンジニアの差は数倍程度でしたが、100倍くらいの差がつくのではないでしょうか。
コーディングスキルだけではなくて、俯瞰して自分の頭で考えられるエンジニアにとっては、パラダイスみたいな世界になると思います。一方で、ただ言われたことをやるだけのエンジニアは厳しくなっていきます。
なにをどのようにつくったら、ユーザーに受け入れられるのか。それを見つけるための観察力や共感力が求められます。そのためには、ユーザーの現場に行ってみたり、日ごろの情報収集をしたりすることが大事です。
以前、車の生産工場へ行ったときに気づいたことがあります。みなさん、工場では手袋をしているんですよね。その状態ではタップができないので、タブレットは使えません。音声入力しようにも、常に機械の音がしていて難しい状態です。でも、現場に行ってみなければ、タブレットで生産工程管理ができるように提案してしまうと思います。
これからのエンジニアは、実装力だけでは生き残っていけません。観察力や共感力が必要で、それらをプラスできれば大きな強みになります。
── 自分でしっかりと考えるスキルが必要になるわけですね。組織で活躍できるのは、どのようなエンジニアだと思いますか?
自分で考えて動ける人が増えると、組織はうまく回ります。
ジュニアクラスのエンジニアからしたら、先輩の背中を追いかけたい気持ちはあると思います。それはいいことですけど、まずは少し落ち着いてください。
周りを見渡して、自分がどこで、なにをしたら活躍・貢献できるのかを考えて実行してほしいです。そうすることで、周りから信頼されていきます。すると、次になにかおもしろいことがあったときに、声をかけてもらえるチャンスが増えます。
試行錯誤しながら仕事をしていくことで能力は伸びていくと思うので、チャンスを逃さないことは大事です。
新卒研修では何十年も変わらない知識を教える
── 新卒入社のエンジニア育成は、どのようにしているのでしょうか?
新卒入社の場合、半年くらい週に1回エンジニア研修をします。これは実業務とは切り離した研修です。 実践的なスキルの賞味期限って、短いんですよ。いま使っているプログラミング言語が、5年後も使われているとは限りません。なので、エンジニアはずっと勉強し続けていかなければなりません。 だけど、何十年も変わらない知識も存在します。 新しいプログラミング言語を覚えるときに、早い人だと1日か2日あれば書けるようになる人がいます。一方、スクールに通って1-2年かけて覚えるような人もいますよね。この違いは「ベースとなる概念」にあります。これは学ぶ価値があるわけです。 そうしたことを基礎から学んでいきます。基礎が非常に大事だと思っているので、半年かけて学んでいきます。 ――何十年も変わらない知識とは、具体的にはどのようなものでしょうか? たとえば、TCP/IPのネットワークは何十年も変わっていないです。マイナーバージョンはありますけど、本質的には変わっていません。コンピュータのCPUやメモリも変わらないですよね。データベース言語のSQLも、何十年も使われています。 こうした知識を、時間に余裕のあるうちにしっかり学んでほしいです。そう思い、新卒研修に組み入れています。 概念を学ぶだけではなく、実際に手を動かしたり試してみたりしてもらっています。
苦しくても、意図的にやり続けて習慣化する
── エンジニアが成長するために、意識しておいたほうがいいことを教えてください。
好奇心を持ってほしいです。なにか1つの技術を使い続けていると、ほとんどのことができるようになります。そうすると、新しい課題や問題が出てきたときに、自分が持っているスキルで足りるときが来てしまいます。
仕事としてやるのであればそれでいいんですけど、その状態で何年も生活のためにやっていくのはつまらないですよね。
新しいものを学ぶことは、非常にストレスがかかります。いままでのやり方であればすぐにできますが、新しいやり方を試すのであれば勉強が必要です。ですが、苦労した時間の長さや悩んだ時間の深さがあって、そのうえでできるようになるとすごくうれしいですし、癖になります。
新しいものが出たときにやってみるか、やらないでいるかは大きな分かれ道です。新しいやり方をやってみて、できたときの喜びを知っている人は、飛びついて試します。おそらく、これを好奇心と呼んでいると思うんです。
最初は苦しくても、意図的にやり続けて習慣化することは大事です。
目指すは地図に残る仕事のソフトウェア版|株式会社ドリーム・アーツCTO
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